Inputの技術 速読:フォトリーディング その2
前回はフォトリーディングの概観について見てきたので、今回はいきなり中身の説明から入りたい。今回のエントリは、もともと社内の若手コンサルタント向けの研修の材料として個人的に作成したテストから再構成してみた。実際のスキルを使えるようにすることを前提に作った内容のため、文書が長くなってしまった。。。
ある程度まとめてはみたもののとても冗長な内容のため、冒頭に目次サマリーを書いてみた。一読したらこの目次サマリーのみを復習しながら、フォトリーディングによる速読をトレーニングすることで、スキルの定着化をはかるとよいと思う。
How to Photo Reading(各ステップのサマリー)
Step1:準備
1. その本を読む目的を明確にする
2. 文書を読む「理想的な心の状態」を作り出す(集中学習モード)
Step2:プレビュー(予習)
1. 本の構成の全体像を把握するため、本をざっと見渡す
2. その本を読むことで目的は達成されるのか、目的に沿った価値があるかを検討する
3. 目的に照らし、さらにその文書を読み進むか否かを決定する
Step3:フォトリーディング
1. フォトリーディングの準備をする(この文書から何を得たいのか明確にする)
2. 加速学習モードに入る(呼吸を整え身体をリラックスさせる)
3. アフォメーション(前向きな考えの宣言)を行う
4. フォトフォーカス状態(「観」の目を使う)に入る
5. 安定した状態でリズムよくページをめくる
6. 達成感とともに、フォトリーディングのプロセスを終了する
※ Inputした情報についての、脳に処理を命令しておくアフォメーションを行う
Step4:復習(ポストビュー)
1. 文書を調査し、文書の構成を理解する
2. トリガーワード(その本の中心的なキーワード)を見つける
3. 自分の知りたいことについて具体的な質問を作る
Step5:活性化(アクティベーション)
1. 情報を脳の中で熟成させるための「 生産的休息」を取る
2. 質問を見直す、脳を活性化させるために最も重要だと思う質問を決める
3. スキタリング、スーパーリーディングやディッピングで質問の答えを得る
4. 文書の主要な点をマインドマップを作って整理する
5. 高速リーディングで最初から最後まで読みさらに理解を深める(必要に応じて)
それでは以下各ステップの詳細についてまとめていく。
Step1:準備
効果的な読書は明確な目的を持つことから始まる。読書をした結果、何を得たいかを意識的に決める。
1. その本を読む目的を明確にする
Check !(目的設定をする時の問い)
- その本を読んだ結果、最終的にどうなることを期待しているのか
- この本は自分にとってどのくらい重要か
- どのくらいまで詳細なレベルまで理解する必要があるか
- 目的を達成するために、たった今どのくらい時間をかけたいか
2. 文書を読む「理想的な心の状態」を作り出す(集中学習モード)
Check ! (集中学習モードに30秒で入るためのガイド)
- これから読む文書を目の前に置く
- 目を閉じてリラックスする。頭の先から足のつま先まで、意識を行き渡らせる。背筋を伸ばして無理のない姿勢で呼吸を整える
- 心の中でこの文書を読む目的を唱える
- みかんをイメージして、後頭部の上の方に置く(みかん集中法)
- リラックスした集中状態にある自分を意識する目元、口元は微笑、穏やかな表情にし、目は閉じたままでも視界がひらけていくように想像できる。(禅のやり方に近いかも)
- このリラックスした集中状態を保ちながら、ゆっくりと目を開け、あなたが心地よいと感じるスピードで読み始める。
Step2:プレビュー(予習)
1. 本の構成の全体像を把握するため、本をざっと見渡す
予習はこれから入手する情報の全体像を理解し読むスピードを上げて理解を助ける。
「まずは森を見よ」、森全体を見渡してから、木々に目を通し、枝葉を見ていく。どんなことが書いてあるのか概要をつかみ、目的を再度明確にし、その文書を読み進めるのかやめるかを決める
本であれば60秒~90秒、短い文書なら30秒足らずのプレビューで、時間をかけて読み始める前に、必要かどうかを明確に判断する。
2. その本を読むことで目的は達成されるのか、目的に沿った価値があるかを検討する
ここでもう一度準備段階で決めた最初の目的をを考えて、この文書で良いのか、最初の目的に沿っているか、問いかけてみる。
Check ! (目的の再確認)
- 当初の目的に関わる情報があるか
- この文書を読み続ける価値があるか
- 当初の目的は達成されるか
3. 目的に照らし、さらにその文書を読み進むか否かを決定する
その本を読み進め目的に出会えるか、それとも目的そのものを再検討するかを決断する。「80/20の法則」に従い、その文書が読み続ける20に値するかを判断する。必要のない文書を読まないと判断することも重要。
予習をすることで、これから入ってくる情報を頭の中に分類・整理することができ、その結果、あとから望む情報を簡単に取り出せる。
Step3:フォトリーディング
「フォトリーディング」は心身ともにより深くリラックスしながら、さらに集中している状態、「加速学習モード」に置くことから始まる。具体的なリーディングにおいては、視線をフォトフォーカス(「観」の目)の状態にし、新しい目の使い方でページ全体を一度に見る。視界を緩め、周辺視野を広げてページの四隅を見るようにする。
ページ全体を脳の写真に撮り、前意識の情報処理プロセスに送り込むのが、フォトリーディングのステップで行う作業である。
1. フォトリーディングの準備をする
この文書から何を得たいのか明確にする。これから数分間集中してフォトリーディングに取り組めるのかどうかを問いかける。
Check ! (準備)
2. 加速学習モードに入る
脳が情報を受け入れる能力を高め、学習に最適な状態を作る(加速学習モードにする)。心身ともにこの状態に入ると、脳はポジティブな考え方に、積極的に反応するようになる。
Check ! (加速学習モードに入る3ステップ)
- 数字の3をイメージ:深呼吸をし、頭の先から爪先までの筋肉をリラックスさせる
- 数字の2をイメージ:過去も未来も忘れこの瞬間に集中し精神をリラックスさせる
- 数字の1をイメージ:美しい静かな場所にいる自分を想像しすべての雑念や緊張を取り払う
3. アフォメーション(前向きな考えの宣言)を行う
学習効果を高めるため、気持ちの持ち方を前向きにする。そのため前向きな考えを宣言すること(アフォメーション)を行う。
Check ! (加速学習モードに入る3ステップ)
4. フォトフォーカス状態(「観」の目を使う)に入る
本を開いて視界を広げ、文字をみるのではなく、ページ全体の余白を見る。「観」の目を使う(ソフトアイ、ブリッブページ(ソーセージ効果))ブリッブページを見るのが難しければ本の四隅を結ぶ「X」を想像するようにしてみる。
5. 安定した状態でリズムよくページをめくる
最初のうちは不安定なので、そうなったら「いま、ここでの最大の目的は、学習に最適な状態を保つことだ」ということを自分に言い聞かせる。みかん集中法を実践し、再度ブリッブページを見つけるようにする。
Check ! (フォトリーディング中に安定した状態を作るコツ)
- 呼吸を深くして一定のペースを 保つ
- ページをめくるリズムに合わせて、心の中で単調な言葉(チャント)を繰り返す
6. 達成感とともに、フォトリーディングのプロセスを終了する
フォトリーディングで取り込んだ情報をあとで引き出すためには、フォトリーディングを終了したときにその情報の処理の仕方をはっきりと脳に命じておく必要がある。Inputした情報についての、脳に処理を命令しておくアフォメーションを行う。
Check ! (脳に指示するアフォメーションの例)
- 「私はいま、この本の印象を感じ取っています…」
- 「私はこの情報を手放し、私の体と心に処理を任せます」
- 「私はこの情報を後で取り出して利用できるのを、さまざまな方法でどのくらい実感できるか楽しみです
Step4:復習(ポストビュー)
フォトリーディングが終わったらすぐに「復習」する。「復習」はフォトリーディングで得た情報をあとで「活性化」しやすくするために行う。復習はフォトリーディングの直後に5~10分で行う。復習では質問を作ることによって情報がはいる整理箱を作り、脳の中を整理して記憶しやすくする作業を行う。また、好奇心を刺激し、情報に飢えた状態を作ることで、読書に接居的になり、目的を達成しやすくする状態をつくる。 復習ですべきことは、「文書を調査する」、「トリガーワードを見つける」、「質問を作る」の3つ。全部で12分程度で済む作業。
1. 文書を調査し、文書の構成を理解する
もう一度文書全体を調査する、目次を始め、文書全体にざっと目を通し、文書の構成を把握することで予習の時より丁寧に行う(約1~3分)。章見出しや図表。ブラフ、太字で書かれている箇所などで、目的に関係ありそうな興味の惹かれる者を調べる。この作業では、文章全体の構成を把握するようにし、著者の論理展開を文章の構造から理解する。
Check ! (文書の構成をよりはっきりさせるための確認しておくところ)
- 表紙や裏表紙に書かれている言葉
- 奥付(出版年月日等)※予習の際に確認できていれば不要
- 索引
- 本の最初と最後のページ、または短い文書であれば、最初と最後の段落
- 太字や斜体になっている部分、見出し、小見出し等
- 囲み記事や数字、図表、グラフ等
- 紹介記事、要約、他人の感想や批判等
2. トリガーワード(その本の中心的なキーワード)を見つける
次のステップで質問を掘り起こすために「トリガーワード」を利用する。「トリガーワード」は、強調されながら何度も使われている語句で、その本の中心的なキーワードの事。一冊の本で20-25個、短い文書なら10-15個を取り出す。
20P程度ごとに一つ程度「トリガーワード」(注意を引くキーワード)を拾う。索引の参照ページが多いもの、表紙や目次、見出し等に多出する言葉に着眼する。リラックスしながら自然と力強い言葉を見つけることがコツ。
3. 自分の知りたいことについて具体的な質問を作る
「質問を作る」とは、自分の知りたいことについて、具体的な質問を考えることである。活性化の中で答えを得たいことを質問として考える。「トリガーワード」を拾ったら「これはどういうことだろう」、「筆者は何を言いたいのだろう」といった疑問を書きだしていく。
トリガーワードの中でも特に知りたいと思うような語句が幾つか絞られる。それが自分にとっての真のトリガーワードとなる。トリガーワードに刺激され、より積極的な姿勢で質問をし、目的意識を持ちながら読むことが肝要。浮かんできた疑問点は質問として書き留めておくことで「活性化」のつテップで役に立つ。
この段階ではまだ文章に深入りしないこと。「今理解したい」という気持ちを気に止めておくだけにして、この段階ではより多くの質問を作ることに専念する。
Step5:活性化(アクティベーション)
復習(ポストビュー)が完了したら20分から24時間、文書から離れ無意識に取り込んだ情報を熟成させる。
活性化の段階では復習で作った質問を使ってもう一度脳を刺激し、文書の中で引きつけられると感じる箇所を調査する。脳全体を利用して、文書と意識的つながりを作り、目的を達成する。「見覚えがある」→「知っている、馴染みがある」→「知識」と段階的に情報を高めていく。
Check ! (目的に合わせて情報を活性化させる方法)
- 「スーパーリーディング」
- 「ディッピング」
- 「スキタリング」
- 「マインドマップ作成」
- 「高速リーディング」
1. 情報を脳の中で熟成させるための「 生産的休息」を取る
最低でも10-20分、可能なら1晩は本から離れる。フォトリーディングした情報を脳の中で熟成させるための「クリエィティブなサボり」を行う。
2. 質問を見直す、脳を活性化させるために最も重要だと思う質問を決める
脳の奥底にある無意識のデータベースにアクセスする鍵は「問いかけ」。問いかけにより情報への回路が開き、望んでいる答えを得る。疑問をもつと好奇心が高まる。脳に問いかけるということは最も良い方法を見つけさせるよう働きかけ、あなたが選んだ文書に対する目的を達成することにつながる。
ここで再度質問を見直し、たった今最も重要だと思う質問を決める。質問を作るときは、その答えの重要性を改めて強調するようにする。答えを求める気持ちが強ければ強いほどよい質問ということになる。集中学習モードに入り、心から知りたいと思い、答えは必ず得られると信じる。
3. スキタリング、スーパーリーディングやディッピングで質問の答えを得る
集中学習モードに入り、「読む目的」や「答えが欲しい質問」に従って興味を惹かれた章を開く。最初のページから順に読まなくてもよく、重要そうに見える箇所から読み始める。読むセクションを決めたらスーパーリーディングを始める。
スーパーリーディングでは、文書全体を広く上から眺める。それに対してディッピングは、目的を達成する箇所に一時着陸して、詳細な情報を得る。スーパーリーディングやディッピングは探しものをする時にも応用できる。(本屋での本探し等)スーパーリーディングもディッピングも他のテクニック同様、能動的に文書に接し、絶えず問いかけ、目的を達成するためのテクニックである。
スーパーリーディングとディッピングは「フォトリーディングの後に行う」ことがポイント。フォトリーディングで先に文書全体を脳に取り込み、無意識のデータベースにつなぎ、その後スーパーリーディングとディッピングで脳に取り込まれた情報を意識の上で認識する。
スーパーリーディングとディッピングは文書の構成を理解し主要な情報のみを取り出して、意味のある方法で再構成し、要約することを目的としており、結果として文書の理解を深め、長期記憶に耐えるものになっている。
Check ! (スーパーリーディング等から得る情報)
- この文書の要点がまとめられている文章、あるいは段落はどこか
- この文書は私の目的とどの程度関係があるか
- この文書をもっと読む必要があるか、次の文書に移るか
4. 文書の主要な点をマインドマップを作って整理する
マインド・マップについては、しっかり書くと数エントリ分必要な内容なため、今回の解説割愛する。
※ 別の機会にこのブログで取り上げたいが、お急ぎの方は下記の資料が参考なる。(いずれマインド・マップについてまとめたら相互リンクを貼る予定)
5. 高速リーディングで最初から最後まで読みさらに理解を深める(必要に応じて)
高速リーディングは文書から、スーパーリーディングやディッピングではとうしても得られない、もっと何かを得たいというとき選ぶテクニック。高速リーディングでは素早く文書を読み通す。本の最初から最後まで読んでいく。複雑さや重要度によって、自分のペースで緩急をつけて味わいながら読む。緩急の付け方は以下の通り。
Check ! (スピードを上げてもよい部分)
- 既にほかのステップで読んだページや段落
- 単純な言い換え、まわりくどい記述、すでに知っている内容、または不要な情報
- 自分の目的にとってあまり重要ではない章や段落
内容によってはゆっくり読むべきことが必要な場合もある。
Check ! (スピードを下げた方がよい場合)
- よく知らないことが出てきた場合
- 複雑な情報で注意深く読んだ方が良いと感じた場合
- とても重要でもっと詳しく知りたいと感じた場合
以上、今回のエントリは長文となったが、それでもいくつかの概念については、この中で整理しきることができなかった。下記の方法論については宿題として別の機会に取り上げたい。
本稿で詳細に取り上げできなかった残課題
- フォトフォーカス
- スーパーリーディング
- ディッピング
- スキタリング
- マインドマップ
長文にお付き合いいただきありがとうございました。