「卒論の続き」

一生青春。 架空的計画(visionary scheme)の目標は世界の法則(The Law of the World)を見つけること。

トム・ケリーさんの講演を聞いてきた。(協創のデザイン・シンキング ~組織と個人の創造性のマネジメント~)

協創のデザイン・シンキング

 週末に日立製作所さん主催のSocial Innovation Forumに参加してきた。

 

 10/30に開催された基調講演では、元WIRED 編集長のクリス・アンダーソン氏の講演、IDEO共同経営者のトム・ケリー氏の世界的なBig nameの方のお話を聞けるという機会に恵まれた。お二方の著作については、読んだことがあったが実際にLiveで聞ける機会はそうそうない。

 

とても貴重な機会であったので忘れないうちに要点を整理してみたいと考え、久々に投稿してみた。今日のまとめはIDEOのトム・ケリー氏の以下の講演からである。

 

[LC02-02]協創のデザイン・シンキング ~組織と個人の創造性のマネジメント~:Hitachi SOCIAL INNOVATION FORUM 2015

 

10月30日(金)13:00-14:00

[LC02-02]

協創のデザイン・シンキング ~組織と個人の創造性のマネジメント~

 ~組織と個人の創造性のマネジメント~  要約筆記同時通訳

IDEO共同経営者
トム・ケリー

製品やサービス、そして企業文化の開発までも手掛けたイノベーションの伝道師 トム・ケリー氏が、デザイン・シンキングなどのクリエーティブ方法論が、イノベーションや企業の成長にどう貢献できるかを詳説。
ニューヨークタイムズ紙のベストセラー『Creative Confidence(創造力に対する自信)』からの各種研究も参照しながら、イノベーションが起きる文化を育むためにはどうするべきか・・・。30数年にもわたり「デザイン」と「イノベーション」のエキスパートとして携わってきた実例を用いながら、イノベーションの秘訣をお話しします。 

 

「協創のデザイン・シンキング ~組織と個人の創造性のマネジメント~」とネーミングされたプレゼンテーションでは、最初トム・ケリー氏自身の言葉でのユーモラスな日本語の紹介から始まった。

 

経営からもっとも近い存在となったクリエィティブ

 30年前、クリエィティビティは経営から最も遠いところにあった。いま、それは経営に最も近いところ、むしろ経営そのものであるといってもいいぐらいである。それぐらいデザインはビジネスにおいて重要な要素になってきている。

 現代は、より少ないリソースで、より大きなことを成し遂げなければならない。クリエイティブな考え方に対する要求が高まっているにもかかわらず、クリエイティブな仕事に使われている時間は全体の25%に過ぎないという。

 

世界的に最もクリエイティブな国は日本

 Adobe社が過去に実施した調査によれば、世界で最もクリエィティビティの高い国は日本だと考えられている。しかし日本人はクリエィティビティの高いという自覚が低い。日本人はもっと自分たちのクエイティビティに自信をもつべきだ。

 

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一方、日本人の自己評価は低い

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出展:“クリエイティビティ”に関する世界的な意識調査

 

デザインシンキングにおいて重要な3つのこと

 クリエイティブについて書かれたトム・ケリー氏の著作にクリエイティブ・マインドセットという著作がある。講演のスライドでも紹介されていたが、いかにしてクリエイティビティを高めるかということについて書かれた本である。

 

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

 

 その中でもデザインシンキングを行う上で、特に大事な3つのことが本講演では語られた。それは、empathy(共感)、Prototyping(プロトタイピング)、Story telling(ストーリーテリング)の3つの要素であった。

 

Empathy(共感)

 技術と人間性のバランスをどう取るか。IDEOでは「共感」という概念でバランスさせている。ユーザを理解し、利用される製品を作る。ビッグデータがあったとしても、外に出てみて調査をしてみた上で実際の確からしさを見ることが必要である。実際にそこで何が行われているのかをみてみることで、データとして語られていることと実際の出来事のを差異を明らかにすることがはじめて可能になる。

 

Prototyping(プロトタイピング) 

 人生を実験と捉えてみること。学習のプロセスは失敗しないと学べないこともある。何度も何度もプロトタイピングすること。プロトタイプを顧客に試し、意見を得ること。誰よりも実験する。ダイソンは5,128機のプロトタイプを作り、失敗しても諦めず、少しずつ改良を重ね今日のポジションを築いた。

Open IDEOでは様々なソーシャルイノベーションのアイデアを得ることができた。

 

Story telling(ストーリーテリング)

 Leverage the power of story telling.

 

 データは覚えにくく、物語は覚えやすい。物語はパワフルなメッセージである。頭に残るわかりやすい話の例として臓器売買の都市伝説が語られた。これは「Made to stick」(邦題アイデアのちから)という書籍の中で語られているストーリーとのこと。

 

 

 

 頭に残るストーリーは6つのエレメントで構成される。

 

SUCCESs

  1. Simple:シンプルに短く伝える。60秒以内で。
  2. Unexpected:予測していないような話(Wowのある話)
  3. Concrete:聴き手が視覚化でき、具体的である。
  4. Credible:話の内容に信憑性があること。
  5. Emotional:同情、共感があること。
  6. Story:物語の形になっている、視覚化できること。

 

  忠犬ハチ公の話は、忠実であることが大切だということを人々に語る。スティーブ・ジョブズiPodをポケットに1000曲を持ち出せると言ってAppleMP3プレイヤーを他社と別のものにした。データでなく物語で伝える。物語によって技術も光る。

 

 

行動経済とストーリテリングの融合

 現在、IDEOでは行動経済とストーリーテリングの融合を試みられているという。「Nudge」(邦題:実践 行動経済学 )で取り上げられている「選択アーキテクチャー」という概念を取り入れ、データに物語で息を吹き込むトライをしているとのこと。

 

 

 人中心の共感、実験、物語を大事にすること。この言葉を持って講演は幕を閉じた。

 

(了)