「卒論の続き」

一生青春。 架空的計画(visionary scheme)の目標は世界の法則(The Law of the World)を見つけること。

「なぜ」で始める要件定義(reading memo)

「なぜ」で始める要件定義

 この本は、デザイン思考に精通したある方のFacebook記事の紹介で購入したもの。本日手元に届いたので早速読んでみた。タイトルの帯には「目的思考(この要望は何のため?)デザイン思考(もっと良い手はない?)で要件定義を成功に導く」とある。

 

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「なぜ」で始める要件定義 (SEの参考書)

 

 この本に興味を持ったのは、デザイン思考を取り入れた要件定義手法を学んでみたかったため。一読したところ世間一般のデザイン思考の方法論とは一線を画しているが、今一度自分自身のこれまでの知識、スキルの再点検と目的思考、(筆者オリジナルの)デザイン思考を活用した方法論を自分の仕事に行かせるよう備忘録的に書いてみた。

 

 

  

本書の目次

  第1章 要件定義がうまくいかない理由

  第2章 思考技術を使った成功手順1 〜システム化方針ん作成〜

  第3章 思考技術を使った成功手順2 〜解決すべき課題の決定〜

  第4章 思考技術を使った成功手順3 〜解決策立案と要件決め〜

  第5章 既存システム改善の要件定義

  第6章 目的思考の基礎演習

  第7章 デザイン思考の基礎演習

  第8章 目的思考の実践演習

  第9章 デザイン思考の実践演習

  第10章 要件定義に必要なスキル

 

    「なぜ」で始める要件定義 (SEの参考書)

  

 

要件定義とは?

要件定義とは、システムの設計・実装に先立って決めておくべき事柄を定義すること。 

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 最近はだいぶ少なくなったように感じるが、要件定義と要求開発が混同して進められることも多い。具体的に何をやるかが要件定義、何がややりたいかを構想するのが要求開発。

要求開発と要件定義をきちんと切り分けてプロジェクト管理することが円滑なプロジェクト推進には欠かせない。

 

 

  要件定義で作成する主な成果物

 

   1. システム化方針

システム化の背景・目的、期待成果、制約条件、対象範囲(事業、業務、部署、既存システム)

 

2. 解決すべき課題

システム化の目的を実現するために解決すべき業務上の課題

 

3. 課題の解決策

課題に直接関係する新しい業務の仕組み(業務プロセス、制度・ルール、組織体制、職場環境)

 

4. 新しい業務の仕組み

課題解決の内容を反映した対象範囲全体の新しい業務の仕組み

 

5. システム要件

新しい業務の仕組みで必要なシステムの具体的な内容。機能要件と非機能要件に分かれる

 

6. 実行計画

システム化を進めるための作業項目、体制、スケジュール、リソース(費用、設備、危機など)

 

 

要望・要件の4つの階層

要件定義の成果物を検討、作成するには、「要望・要件の四つの階層」を理解しておくことが重要です。

 

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"①経営レベル、②業務レベル、③仕組みレベル、④システムレベルについても要望を収集し、構造的に分析した上で、要件として定義する必要があります。"

 

この階層化についてきちんと整理できるかどうか。優秀なビジネスパーソン に共通している資質でもある。相対している相手に応じ、階層化を踏まえて必要な抽象度でのコミュニケーションができるかどうかは、仕事の品質、スピード、顧客満足度に大きな影響与える。

 

 

要望・要件の四つの階層

 

① 経営レベル

売り上げ、コスト、利益改善に関する要望・要件。法令対応、災害時などの事業継続も、経営レベルの要件。

 

② 業務レベル

特定業務の品質、生産性、スピードの改善に関する要望・要件

 

③ 仕組みレベル

業務の仕組みを構成する「業務プロセス」「システム活用」「組織・体制」「制度・ルール」「職場環境(人材、設備、機器など)」の要望・要件

 

④ システムレベル

新しい業務の仕組みで費用なシステム内容を具体化

 

 

要件定義における「目的思考」「デザイン思考」

要件定義で必要な思考技術には、「目的思考」とデザイン思考の2つがあります。

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 ここでいう目的思考、デザイン思考は筆者が長年にわたり磨き込んで来たオリジナルな思考法らしい。その意味での目的思考、デザイン思考を簡単に整理しておこう。

 

目的思考

 目的思考は、収集した要望や検討した要件について、それらの目的や影響を考え、有効性を判断するためのスキル。不要な要望・要件を排除し、有効な要件を絞り込む。要望・要件を実施することによる効果と影響を基に、要望・要件の有効性を判断する。以下の5つの手順で進める。

 

 

  目的思考の実施手順

 

   1. 要望・要件の理解

要望・要件の内容を把握し、要望・要件の4階層のうち、どの階層にあたるのかを理解す

 

2. 目的・影響の確認

把握した要望・要件の目的や影響を、経営レベルの要望、要件が理解できるまで繰り返し確認する(目的の目的を問い、経営レベルの要望を明らかにする)

 

3. 目的影響の評価

経営レベルや業務レベルの要望・要件の重要性を評価し、対策が必要か否か判断する

 

4. 要望・要件の評価

経営レベルや業務レベルの要望・要件の実現にとって、どの程度効果があるかを評価す

 

5. リスクの想定

要望・要件の実施により発生するリスクを想定し発生する可能性の高さと、発生した際の影響の大きさを評価する

 

 

デザイン思考

 デザイン思考は、要望・要件の十分性、網羅性を評価し、目的を実現するために必要・重要な要件を抜け漏れなく抽出するスキル。以下の3つの手順で進める。

 

 

   デザイン思考3つの手順

 

1. 目的の確認

要望・要件によって実現する目的を確認する

 

2. 観点の明確化

要望・要件を漏れなく抽出するための観点を明確にする

 

3. 要望要件の抽出

目的を実現するために有効な要望・要件を漏れなく抽出する

 

 

読んでみて

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 目的思考、デザイン思考については本書の中に演習もついており、さらに第10章の「要件定義に必要なスキル」には5W2Hやオープン、クローズクエスチョン等の実践的な方法も端的に触れられている。

 

 詳細は本書を読んでいただきたいが全般にわたり、平易な表現で描かれておあり、ページ数も150Pちょっとと物足りなさも感じるが、実際に実務で使える考具としてはすぐれた内容だと感じた。

 

 実務で本当に利用できるレベルとは記載が細かすぎたり、多すぎるとダメだと考えている。覚えられない、思い出せない、結果として使いたいときに使いこなせない。ただし、要件定義の詳細なプロシージャ的な手順書ではなく、ある程度抽象度の高い部分で要約したエッセンスが説明されているので、具体的なHow to本と組み合わせて読むとさらに効果的かもしれない。

 

 チャートも多く、要件定義で悩んでいる経験の浅いエンジニアから、今一度頭の中を整理したいという経験者にもおすすめしたい書籍である。

 

 

 

 

                                 (了)