「卒論の続き」

一生青春。 架空的計画(visionary scheme)の目標は世界の法則(The Law of the World)を見つけること。

ゴールデンサークル「信じている世界」

 今日は私がいつも最新技術やトレンドについてアドバイスをもらっている、マーケティング担当のK君から教えてもらった「ゴールデンサークル」という考え方について書いてみたい。

 

人材開発のROIと測定可能な世界
 本題に入る前に、最近とあるコンサルタントが中心に集まる勉強会で、組織や人材のパフォーマンスをあげるための人材開発系施策はどうあるべきかという話しから、人材開発施策のROIは出せるのか、出せないのかというテーマの話になった。その流れであるファームのパートナーの方から、経営者の意思決定には「測定可能な世界」と「信じている(レベルの)世界」がそれぞれあるというようなお話を伺った。

 「測定可能な世界」とは財務諸表をはじめとするKGI、KPI等での結果の予測をベースに経営施策を立案するやり方。当然ひとつひとつの施策には合理的なROIが求められ通常の会社経営ではこちらの方が一般的であろう。この場合、施策の立案は経営陣が自らというよりは企画部門が施策を立案推進するというケースも多いのではないか。マネジメントを行う上では、定量化とモニタリングは大事な要素ではある。しかしすべてが計測可能かといえば、人間のメンタリティみたいな部分では特にそうでない部分もある。

 

「信じている世界」

 一方、ROIを云々いう前に、今必要だからやるべきだからやるという「信じている世界」も経営にはあるという。これは経営者が今その企業に必要と考えることを、市場分析や戦略立案、ROI分析等に先立って発信し、リードするやり方である。これは到底企画部門ではできるわけもなく、トップや経営陣だからこそできるやり方だろう。

 当然、「信じている世界」であっても上場企業等であれば、それを裏付ける分析もなされているはずだが、それは後付けの裏付けであり経営トップの「信じている世界」がまず先にありきというとことが大きく異なるところである。よくコンサル時代の上司からは「経営者の勘やおもいつきに裏付けを与えるがコンサルタントの仕事だ」と言われてきたが、「経営者の勘や思いつき」が「信じている世界」にあたるのだろう。

 前段が長くなってしまったが、今回はこの「信じている世界」という内容について掘り下げてみる。

 

TEDのプレゼン「ゴールデンサークル」

 今回のテーマはこの「信じている世界」の本質をとてもうまく表現しているTEDのプレゼンテーションから「ゴールデンサークル」という考え方を取り上げたい。

 

「物事がうまくいかなかったときにそれをどう説明するのか?」

「常識をすべてひっくり返すようなことを誰かが成し遂げたときにそれをどう説明するのか?」

 

 語り手であるサイモン シネック氏のプレゼンテーションはこのような語りかけで始まる。Apple続的な革新性、マーチンルーサーキングの市民権運動、ライト兄弟の有人動力飛行等、リソースや人材等で勝っていた人や組織はいたはずだ。なぜ彼らでなければならなかったのか。彼らに共通している要因をサイモン氏は発見した。

 

以下、TEDからの引用。

ゴールデンサークル

三年半前のことです。 私は発見しました。 この発見によって世界がどう動いているのか 見方がすっかり変わりました。 そればかりか 世界に対する接し方も すっかり変わりました。 明らかになったことは あるパターンです。 わかったのは 偉大で人を動かす 指導者や組織は全て アップルでも マーチン ルーサー キングでも ライト兄弟でも 考え 行動し 伝える仕方が まったく同じなのです。 そしてそのやり方は 他の人達とは正反対なのです。 私はそれを定式化しました。 世界でもっとも単純なアイデアかも しれません。 私はこれをゴールデンサークルと呼んでいます。

なぜ? どうやって? 何を?

golden サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか 

この小さなアイデアで ある組織やリーダーが なぜ 他にはない力を得るのか説明できます。

用語を簡単に定義しておきます。

世の中の誰にせよ どの組織にせよ 自分たちが何をしているかは わかっています。 100% 誰でも どうやるかをわかっている人もいます。 それは差別化する価値提案とか 固有プロセスとか 独自のセールスポイントと呼ばれるかもしれません。

でも「なぜやっているのか」がわかっている人や組織は 非常に少ないのです。 「利益」は「なぜ」の答えではありません それは結果です。 いつでも結果です。 「なぜ」というときには 目的を問うています。 何のために? 何を信じているのか? その組織の存在する理由は何か? 何のために朝起きるのか? なぜそれが大事なのか?

実際のところ私達が考え 行動し 伝えるやり方は 外から中へです。 それはそうでしょう 明確なものから曖昧なものへ向かうのです。 でも飛び抜けたリーダーや 飛び抜けた組織は その大きさや業界にかかわらず 考え 行動し 伝える時に 中から外へと向かいます。

tooutside サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか 

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人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされる

 ゴールデンサークル内容の詳細は、上記サイトを参照いただくとして、この考え方は、生物学、脳科学とも整合性があるとのこと。分析思考や言語と行った大脳新皮質ではなく、感情や信頼、忠誠心といった大脳周辺系に訴えているところが、偉大なるリーダー(人々を導く人々)の特徴であるという。

 自分が信じていることについて語れば そのことを信じてくれる人たちを惹きつける。人々は自ら進んで「自分のために」自分の信じることをする。冒頭の「信じている世界」を実践する経営者の方々は、周りに流されずに進める強さを持った人たちであり、このようなTopのいる企業が今後も成長軌道を描けるのだろう。

 とはいえ、スタートアップのサイズで簡単に決められたことも数千人、数万人という組織サイズになってくると、なかなか「なぜ」を組織内に純粋に追求し、発信することが難しくなってくる。定量的な説明が伴わない施策の提案や推進は経営トップといえどもリードすることは難しいのではないか。特に日本では、文化の違いもあり日本企業の経営者のだれもがスティーブ・ジョブスのように振る舞えるわけではないだろう。

 ゴールデンサークルのような考え方が普及することで、既存のケイパビリティや、ROIから始めるのではないイノベーションがたくさん起きてくれば、もっともっと世の中が元気になっていくような気がする。


まとめ

  • 人は「何を」ではなく「なぜ」に動かされる
  • 自分が信じていることについて語れば そのことを信じてくれる人たちを惹きつける。人々は自ら進んで自分のために自分の信じることをする。
  • 飛びぬけたリーダーは「why(なぜ、何のために)」→「how(どうやって)」→「what(何を)」の順で考え、伝えている

 

 引用元のTEDサイトの日本語訳付きの動画とプレゼンテーションの全文が掲載されている。また書籍も出ているのでより詳しくは下記リンクから

 

TED記事:

サイモン シネック: 優れたリーダーはどうやって行動を促すか | 読むTED:TED人気スピーチ日本語訳 - 30秒で把握するTEDプレゼン

ゴールデンサークル(Why-How-What)、人は「何を」でなく「なぜ(何のために)」に動かされる

 

書籍: WHYから始めよ!―インスパイア型リーダーはここが違う

*1:http://ted.babblebuzz.com/archives/29_%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3-%E3%82%B7%E3%83%8D%E3%83%83%E3%82%AF-%E5%84%AA%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%86%E3%82%84%E3%81%A3%E3%81%A6/#sthash.xaMDlzZB.dpuf