「卒論の続き」

一生青春。 架空的計画(visionary scheme)の目標は世界の法則(The Law of the World)を見つけること。

フレームワークの作り方

 

オリジナルを作る意義

 前回まではフレームワークの使い方を中心に考察してみた。端的にまとめれば、「様々なフレームワークを縦軸、横軸に配置することにより、問題の全体像の定義や分析フレームを手早くMECE感を持って作り出すことができる」ということがポイントだった。

 問題解決に置ける解の幅や、ソリューションの引き出しのバリエーションを広げるには、たくさんのフレームワークを知っているほうが有利だ。頻出する3C、4Pなどメジャーなフレームワークも十分に有効だが、ここは一歩踏み込んで考察を進め、お題である「オリジナルなフレームワークを作ってみる」ことを提案したい。自分が生み出した、オリジナルなフレームワークをたくさん持っていると仕事のスピードが早くなるなけでなく、世の中にない情報なので付加価値の高い情報となる。

 

(ちょっと)オリジナルなフレームワークの作り方

 全くのオリジナルなフレームワークを生み出すことは難しいし、また多くの場合その必要もない。要は一般的にフレームワークとして取り上げられている内容ではないが、情報を整理するのに有効な考え方の要素をフレームワークに編集してしまうのである。

 

情報ソースとしてメジャーなもの

  • ビジネス書やビジネス雑誌
  • 官公庁の資料、学術文書等
  • 異業種で利用されているスタンダード
  • 企画書、提案書

 

オリジナルなフレームワークの作り方

 やり方は至って簡単。原型を探してきて、要素を抽出し、簡易にまとめる。是だけである。例えば経済産業省の「経済産業省政策評価実施要領」という資料を例に取り上げてみる。5ページに「2.政策評価の観点に関する基本的な事項」という章がある。ちょっと長いが抜粋してみる。

2.政策評価の観点に関する基本的な事項 

政策評価の実施は、評価の対象とする施策の特性に応じて、主として必要性、効率性及び有効性の観点から行う。 

 

ア.必要性 

 施策の目的が、国民や社会のニーズ又はより上位の行政目的に照らして妥当性を有していること、また、政策課題が民間活動のみでは改善できないもの(市場の失敗)であって、かつ、行政が関与することにより改善できるものが存在することを明らかにする(「市場の失敗」については基本的に、「行政関与の在り方に関する基準」(平成8年12月16日 行政改革委員会策定。以下「行政関与の基準」という。)の「行政関与の可否に関する基準」による)。 

 

 イ.効率性 

 目的や目標に照らして、どの施策手段による実施が最も望ましいかについて検討する。施策手段の種類としては、予算措置、政策金融、税制措置、規制、施策を講じないこと等があり、また、各政策手段の内容としても様々なものが考えられる。これら選択肢のうち主なもの複数について社会的便益と社会的費用の比較を行い、最適なものを選択する。 

 

 ウ.有効性 

 採ろうとする施策手段が目的や目標の達成、あるいはより広い国民経済的・社会的な目的・目標に対して有効である根拠及び程度を明らかにする。 

 

 エ.優先性 

 施策や施策を構成する事業の中で、以上のア~ウの観点からの評価を踏まえて、どれをより早い時期に、また、より多く実施するかという優先性の判断を行う。 

 

 オ.その他の観点 

 上記のほか、施策の特性に応じて必要であれば、公平性など別途の観点を加味して、評価を行う。

 

出典:

http://www.meti.go.jp/policy/policy_management/kihon-keikaku/jishiyoryo.pdf

 見直してみると、政策だけでなく企業が事業の評価をする際にも使い勝手のよく当てはめられそうだ。企画書にこれらの視点を盛り込んで、複数施策を比較検討の軸として使ったり、最も有効と考えられる施策を選んだ後、事後評価にも使える。ここでフレームワークとして覚えておくのであれば「必要性(=合目的性)」、「効率性」、「有効性(=効果性」)、「優先性」の4項目を頭にストックしておけばよい。この4項目を端的に整理してみるとこんな感じ。

施策評価のフレームワーク

  • 「必要性」:上位の方針や目的に合致した施策になっているか?
  • 「効率性」:実現までにどの程度のコストや労力が必要か?
  • 「有効性」:目的・目標を達成するために有効な施策か?
  • 「優先性」:その施策は必要性、効率性、有効性から考えて優先順位高く対応すべきか?

 

 お役所におつとめの方には当たり前のフレームワークなのかもしれないが、民間勤めの身からみると新鮮な切り口もたくさんある。ちなみに「必要性 効率性 有効性 優先性」でググると検索上位は軒並み役所関連である。以前は同じ情報を入手しようと思えば、図書館にいくなり、本を買うなり、役所に行くなりしなければならなかっただろう。

 現代はこういう情報をネットですぐに入手できる時代である。DJ的に既出の情報をリミックスすることで、オリジナリティのある提案を作成することもできる。慣れてくると割と楽しい知的作業なので、日常の仕事にも活用してみてはどうだろうか。

 

マジックナンバー7±2

 マジックナンバー7という概念をご存知だろうか。人間が瞬間的に記憶できる(短期記憶で保持できる)情報の最大数は、一般に5〜9の間、すなわち7を中心としてプラスマイナス2の範囲内であるという概念である。最近の研究では「4」前後が短期記憶の限界らしい。フレームワークの多くが4前後の要素で構成されていることもまんざら無縁ではないだろう。オリジナルを作るときも項目がこの範囲になるよう組み立てたい。

 項目がこれ以上になる場合は、大きく2つ以上の概念に分けてコンセプトを階層にするなど工夫をするとよいと思う。伝わりにくいかもしれないので参考までに分け方を例示しておく。意思決定のアプローチで「PrOACT+URL」と営業の説明技術の「SPIN+BFAB」といったモノがある。

 

例1:「PrOACT+URL」

  • PrOACT
    Problem(問題)、Objectives(目的)、Alternatives(選択肢)、Consequences(結果)、Tradeoffs(妥協点))
  • URL
    Uncertainly(不確実性)、Risk Tolerance(リスク許容度)、
    Linked Decisions(関連する意思決定)

 

 「PrOACT+URL」は合理的な意思決定を行うためのフレームワーク。5つの基本要素と3つの影響要素のあわせて8つの要素で構成されている。「PrOACT」は意思決定の基本要素、「URL」は変化の大きい環境の中で考慮すべき要素を明らかにするフレームワークである。

 

例2:「SPIN+BFAB」

  • SPIN
    Situation Questions(状況質問)、Problem Questions(問題質問)、 Implication Questions(示唆質問)、 Need-Payoff Questions(解決質問)
  • B-FAB
    Benefits(利益) Features(特徴)、Advantages(利点)、
    Benefits(利益)※1番目のBenefitsの強調

 

 SPINは状況から問題を明らかにし、問題の重要性を示唆した上で、あるべき姿の提案や解決の方向性を提示するというフレームワーク。続いて、B-FABは解決策に対しての製品やサービスの提案を顧客の利益のニーズを満たす者であること、製品の特徴、効果効用、従って顧客の利益になるという説明を行うフレームワーク。セットで行うことで顧客に効果的な提案を行うためのフレームワークである。

 

 ここではフレームワークの内容そのものに説明することが目的ではないので、内容詳細の説明については割愛するが、特に「PrOACT+URL」は検索しても容易に見つからなかったのではないだろうか。海外のサイトでちらほら見かけることができたが、これなどはもはやオリジナルに近いと言えよう。

 ちょっとした工夫をしてみることで自分にしか出せない付加価値が出せるようになる。ビジネスリファレンスは常にチェックできるよう自分なりの情報ソースを作っておくとよい。とはいえ一から集めるのも面倒なので、自分がよく使っているコンサル専門の紹介会社ムービンさんのサイトを最後に紹介しておく。

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